産土は母の俤 幼き頃に生まれし郷で見し母の顔
堕ち行かば宇宙廻りて昇り坂 天上天下人は独り身
水落とし讃歌
水落とし見るたび思う那智の滝 産霊(むすび)もありてあわれなるかな
水落ちて飛沫飛び散り跳ね上がる その白き水穢れ清める
水落ちる一気呵成のその力厳かにして神仏宿る
ケをハレに瞬時に変える水落とし背筋伸ばして異界を想う
那智の滝下から上を見つめれば水の王国 黄泉の郷あり
瓶詰の恋
禁断の恋の行方はあやかしに 夢野久作『瓶詰地獄』
兄妹(きょうだい)の許されざる恋瓶に詰め この世の地獄海流れゆく
若き日の成さぬ性愛その記憶 静脈巡り『ドグラ・マグラ』に
青木砂織的寺山世界
縁日の見世物小屋に白塗りの狐と狸 怪し風吹く
「通りゃんせ」童の歌に秘められし鄙の掟は寺山世界
赤色(せきしょく)の鳥居の先に『草迷宮』母の子宮に我宿りおり
現代と近世の時混ざり合い舞台は東京字(あざ)江戸の邑(むら)
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寺山の描く荒野は人の群れ喧々諤々 劇は始まる